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黄金分割は本当に美しいのだろうか?、

固定概念ではないのだろうか?



『黄金分割は美しいのではない、大きく見せるだけ!』






 私が黄金分割を詳しく知ったのは、1967年、高校1年の時、柳亮の『黄金分割』を読んでである。まったく理解できなかったが、日本画家か仏師になろうと夢を見ていた私にとって、黄金分割は美しいものであると言う固定概念をもつ必要があった。

大学時代、民族楽器の収集癖があり、かなり集めたが、その中に魂柱の倒れた鈴木のヴァイオリンがあり、これを立てたのが、きっかけでヴァイオリン製作の道に入ってしまった。あの時、魂柱が倒れていなっかたら違う道を歩んでいたのではないかと、今でも思う。

ヴァイオリン製作の道に入って、いつも思っていた事に、古い楽器をコピーするだけで、何で確かな作図法がないのだろうか、オリジナルで作っていると豪語している製作者も単に基本寸法を少し伸ばしたり縮めたりしているだけである。

ヴァイオリンの作図法に黄金分割や正五角形が使われているという事は、色々な本や、研究者が言っているが、単に胴長に正五角形を当て嵌めているだけで、実際の作図に触れて説いているのは、ほとんどなく、あってもまったく説得力がなかった。
私の知る限り、オーストリア人のZeder Bauer 1877-1950 もヴァイオリンの形には、調和の比率が総て内在していると述べているが、実践的な作図法は説いていないし、またシモーネ サッコーニも『I SECRETI DE STRADIVARI』の中で 二等辺三角形による黄金分割を使って述べているが実践的な作図では、まったく論理性を失っている。

この様な中で、総ての寸法を説明できる考え方はないだろうかと模索している時に思いついたのが、ドイツ人Ernst Mossel教授のクライス ジェオメトリー(Kreis geometorie)であった。即ち、ヴァイオリンの作図法に内接正十角形を当て嵌める事で総て説明できるのではないかと、、。

暇な時はいつも正十角形と楽器を眺めていた。面白いことに、何かを探して考えている時は、何も発見できないのに、寝床に入って頭が空になって寝付く頃になると、はっと糸口が沸き、そのまま起きて作図する事がよくあった。

作図法を聞けば、なんとも単純で簡単だが、こんな事に気が付くのに20年近くも掛かってしまった。



 ところが最近、黄金分割は本当に美しいのだろうか?、固定概念ではないのだろうか?という疑問にぶつかってしまった。
『美しい物には、黄金分割がある』、『黄金分割がない物は、美しくいない』と言う命題、対偶は真なのか偽なのか?

ピタゴラスは、2つの音に関して、その比が単純なほど協和すると言っている。
これを少し拡大解釈して、矩形でも、二つ比が単純なほど美しいのではないだろうか。


モノコードの駒を3:2の所に置き、3の所をa(440Hz)に調弦すると、2の所は純正律のe'(660Hz)の5度音程になる
(完全平均律では、659.2552113825Hzにあたる)

(上記の周波数を求めるのは、拙作ソフトDECAGON Sonic Oscillatorをご利用ください。ダウンロードのページへ)

また、『ヴァイオリン作りの独り言の 18  5度音程とピタゴラス』
も参考にしてください。



1:2(1対2)と言う最もシンプルな比は、音階ではオクターブであり、矩形では正方形が2つくっ付いたもので畳やタイルに使われている。

2:3(2対3)と言う比は、5度の最高に綺麗な和音である。矩形では誰もが知る縦横比2対3の日章旗である。

3:4(3対4)と言う比も、4度の綺麗な和音である。矩形ではワイドでない元々のテレビやコンピューターの画面比である。

なのに黄金比は2:1+√5である。数字では無限小数である。1:1.618…..、あえて基数の比で表すと近似値で5:8である。何故このような煩雑な比が美しいのであろうか?
黄金比に近い16:9のシネマスコープは、本当に美しいのか?、販売戦略の面で映画に押されてテレビやコンピューターも16:9になってきているが、目は疲れないのであろうか?脳は落ち着くのであろうか?

1:√2、即ち1:1.4141356は、調和の門でA4 の用紙や本のサイズのよく使われている。この1:平方根と言う比は、正方形の対角線を次々に取ることで成り立っている。だから作図上では非常に単純である。

参考 『拙著 ヴァイオリンのf孔』より



では、これら1:平方根の比は和音にはないのだろうか?

作曲の分野でも調和の門や黄金比が使われていたと言う話をしばしば聞く。
しかし音階と言う基本要素を相対振動数比で考えると調和の門1:1.41421356の前項1をa(ラ)=440Hとして平均律の主音c(ド)で取ると261:369である。
即ち、前項1をcと取るとc(ド):f♯である。(正しくはファ♯は367.994Hzであるら1Hz高いのであるが)

    1:1.414 => 261:369  => c:f♯         

長4度で、最高の協和である5度の隣である為に非常に不協和である。但し、音階にも調和の門1:1.41421が生きていることを示している。
これは、平均律の各音程は2の12乗根だからである。  もしかして、この不協和は宇宙を表すのか!、、、。

ヘンデルの嬰ヘ長調に通じるのか、、。


(平均律の各音程である2の12乗根、および平均律の周波数を求めるのは、拙作ソフトDECAGON 黄金比 calcをインストールしてヘルプルの使用例をご覧ください。ダウンロードのページへ)



また、黄金比ではどうであろうか?
1:1.618の前項1をa=440Hとして純正律のcで取るとで264:427である。
即ち、前項1をcと取るとc:aとa♭の中間の音である。
まったく協和しない。  しかし、無限を表すのか、、。


中外比(黄金分割点)の所にモノコードの駒に置き、1.618の所を純正律のc(264Hz)に調弦すると、1の所は平均律のa(440Hz)とa♭(415.305Hz)の中間の音となる




では、ヴァイオリンの調律にも使われる2:3の5度の最も綺麗な2和音の比は、矩形においても 1:1.5(2対3)で国旗にも使われており黄金比1:1.618(5対8)より単純であり、よい美しいはずである。

これは、黄金比の持つ不尽根数からくる生命の無限性と自然界の摂理なのだろうか?、または、単に断裁のし易さと経済性だけなのだろうか?

一つの実験であるが、同じ面積の1:√2、 3:4、 2:3、 2:1+√5、 1:2の5種類の矩形のパンをお腹のすいた子供に見せ、一つ選ばせると言うのも、面白いと思う。

もしも、2:1+√5が無限小数ゆえに大きく見えるとすると、大きく見えると言う事は、素晴らしい事だが、美しいのとは、違う。

しかし、過去において大きく見えると言うこと自体、美しかったのかもしれない、、。

『なぜならば美と言う字は、大きな羊だ!』








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